既に企業の日常業務にITを活用しないという選択肢は無くなったといえるのではないでしょうか。
もしも、パソコンやネットワークが使えなくなったら、ほとんどの業務は止まってしまうか大きく遅延してしまうでしょう。
最近ではDX推進やデジタル化という流れが強くなってしますが、そのような経営戦略に欠かせないのが情報システム部門、通称「情シス」です。
しかし、メディアなどでは、
- 情シスが無能で役に立たない
- 依頼したIT活用が進んでいない
- 情シスは仕事をしていない
- 中小企業に情シスなんて不要だ
といったような意見が多いことに気がつくでしょう。
企業の運営にはIT活用が不可欠で、その保守や運用、業務改善を行っている情シスがなぜ無能と言われてしまうか疑問がわきます。
また、情シスの業務を理解しないまま、わかろうとしない人が多いことが情シスの業務負荷を更に悪化させることになっていることをご存知でしょうか?
この記事では、なぜ情シスが無能といわれてしまうのか、原因を探りながら、情シスの本当の姿について解説します。
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Contents
情シスが無能と言われる原因とは
情シスが従業員や経営者から無能だと言われてしまうのはなぜなのでしょうか?そもそも、IT業務について理解ができていない層の人たちが情シスを評価できるということがおかしいのではないでしょうか。
しかし、情シスが無能だと思われてしまうのは、なにか原因があるはずです。その原因について解説いたします。
業務内容がわかりづらい
情シスの主な業務は業務システムの運用や保守です。DX化が推進されている現代において業務システムはストレスなく利用出来て当たり前と考えられています。しかし利用できない、動作が遅い、使い方がわからないなど少しでも困った場面で情シスが求められます。
新しい業務システムの導入や開発は変化が目に見えて利用者にも説明がしやすいですが、情シスの主な業務である運用や保守は目に見えにくい部分です。
そのため利用部門から見れば、特に時間の借用が必要なメンテナンスなど「その作業が何故必要なのか?」、「そもそも何をやっているのか?」、「この前もやったのにまたやるの?」と業務のわかりづらさが、理解の無さを通り越し、批判を受けてしまう場合もあるようです。
ITリテラシーが低い現場であればあるほど、そもそもITの仕事を理解できる人が少ないことから嫌われたり、邪魔者扱いされたりする状況が起こりやすいと言えます。
対応に時間がかかりすぎているイメージがある
情シスの業務は社内システムの運用や保守だけではとどまりません。IT関連の資産管理、業務システムやパソコンに至るまで社内IT機器のヘルプデスク、メンテナンス等も業務範囲に含まれます。
また近年ではクラウドサービス、テレワークの普及から社内IT機器以外にも様々なクラウドサービス、セキュリティ対策、VPNなどのアクセス回線周りも考慮しなくてはいけません。このように広い業務範囲に加え、利用部門からの問い合わせが輻輳することで、問い合わせの回答にも当然ですが時間を要してしまいます。
またデバイス、業務ロケーションの多様化、システム更改サイクルの短縮、日々発生するセキュリティ対応などの手順をナレッジ化することが難しく、利用部門からみれば「こんな簡単な問い合わせなのにどうして時間がかかるの?」という情シスの評価を下げる状況が起こりやすいと言えます。
コストセンターだと思われている
情シスは積極的な投資をすると「青天井」状態です。特に近年、情シスが担うことの多いセキュリティ対策などやってもやってもきりがなく、年間億単位の投資もざらではありません。
また情シスでは業務を支えるIT技術者の育成に時間がかかります。昨今のIT人材不足から多くの時間を投資する必要があります。
しかし情シスは投資した分を回収できるかというと財務諸表上には明確に現れません。なぜなら営業、広告、製品開発のように売上に直結する投資ではありません。つまり情シスにかかるお金が「投資」ではなく「コスト」と考えられがちなのです。そのため業績が下がった時などは特に「予算に見合う働きをしているのか?」と利用部門からやり玉に挙がってしまうことが多いと言えます。
情シスによくある事象についての詳細は「情シスあるあるをご紹介!じつは企業が解決するべき課題も潜んでます」の記事で紹介しています。
じつは情シスは多くの業務を抱えている
ITのなんでも屋さんになっている
情シスのイメージはITに強く、様々なデバイスを使いこなし、最先端技術を使いこなすイメージがあるかもしれません。しかし現実はそうはいかない部分が多々あります。
あくまで傾向としてですが、DX化が進まないような環境においては、Wi-Fi環境も整備されず、物理的なLANケーブル、Hub、スイッチの敷設、動くからという理由でパソコンを買い替えず、OSメンテナンス、サポートが切れたOSやアプリケーションのメンテナンス、会社のネットワークから個人利用のショッピングをするなどセキュリティリテラシーの低い現場では地味で忍耐を要する「なんでも屋」業務が殆んどです。
昨今、負担が増え続けている
先述した通り情シスは「コスト」として捉えられがちです。そのことから企業におけるコスト削減の対象として業務効率化のための、ITシステムの導入は増えつつも、情シス人員は削減の対象になりがちです。企業のあらゆるITを担う「ワンオペ情シス」というキーワードも定着してしまっています。
またテレワークの普及により遠隔からのアクセス環境、クラウドサービスの利用、持ち出し、持ち込みデバイスの管理が必要になりました。これらの管理に加えてセキュリティ対策も昨今注目を集めています。
特にテレワークはコロナ対策として急速に広まったことから、環境が整備されないまま実行されたケースも多いと言われています。そのことからリモートアプリの導入、システムの設定変更、アクセス権の見直し、利用部門からの問い合わせのみならず、なにか問題が起きたときのトラブルシュートや根本的な是正処置、社内における利用ポリシーの改定など挙げればきりが無いほど業務量が増えたと言えます。
もし、社内や経営者からの理解が得られていない状態だと負荷は増え続けるけど、周囲の理解は得られないという状態になり情シスの人たちもやりがいを感じずに、キツイことだけをしなくてはならないということになります。現在は情シス部門のエンジニアも人材不足でどの企業も欲しがっている状態なので、転職は容易に可能ですから、注意しなくてはなりません。
情シスの仕事内容や重要性についての詳細は「情シスの仕事内容とは?役割や重要性も解説。ワンオペ情シスのリスクと対策!」の記事で紹介しています。
情シスが無能と言われないためにすること
情シスが「無能」と揶揄される根本は情シス業務の理解の無さにあります。情シスの重要性を企業トップが認識し「コスト」から「投資」という考え方にシフトしていくことが大切です。
企業にはCTO(Chief Technology Officer)と呼ばれる「最高技術責任者」や、CISO(Chief Information Security Officer)と呼ばれる「最高情報セキュリティ責任者」という役割があります。日本ではCEO(Chief Executive Officer)と呼ばれる「最高経営責任者」は既に普及しておなじみですが、CTO、CISOはまだまだ兼務や肩書だけで権限を備えていないというアンバランスな状況も多いようです。
このような状況からも見て取れるように、まだまだ日本ではIT、セキュリティといった分野においては経営要素として諸外国と比べ意識が低いと言わざるをえないでしょう。
このような状況において、情シスの貢献度を理解してもらい「コスト」ではなく「投資」であることを証明するために、成果を可視化することが大切ではないでしょうか。
また積極的なコミュニケーションも大切です。社内でもITリテラシーが高いキーマンがいるはずです。まずはそのような人に対し積極的にコミュニケーションを取り理解を得ることが重要です。
またそのような人材がいなくても感情的になってはいけません。ITリテラシーが低い人ほど優しく丁寧に対応することで少しずつ現場での信頼関係を構築していきましょう。
情シスはしっかりとコミュニケーションを取っていれば企業内でも一番感謝されるポジションです。それを信じて根気強く取り組みましょう。
経営陣や社員がITに疎いことも原因の1つ
ある調査機関レポートによれば日本におけるIT関連予算は4割以上が1千万円未満であるという結果がでています。ちなみにアメリカ、オーストラリアは1千万未満が全体の2割程度です。またその中でもセキュリティに関連する予算は6割が10%未満です。
全体としてDX化関連の予算は増加傾向にありますが、諸外国と比較するとまだまだIT関連に対する投資は低いと言えます。
これは何を意味するのでしょうか。様々な見方がありますが、まずは「ワンオペ情シス」という状況が生み出され続けている要因としてIT人材不足という根本的な要因があり、情シスを適切に運用できるほどの人材(リソース)が確保されていないのです。
そして日本では思っている以上に経営陣がITに疎いという企業も多く、情シスの状況把握もできていなかったり、ITに関して適切な投資が用意されていなかったりしているのです。最悪の場合はセキュリティ対策に関するリスクを把握できておらず、サイバー攻撃により機密情報を盗まれてしまうといったようなケースも考えられるのです。
日本のCISO(Chief Information Security Officer:最高情報セキュリティ責任者)は兼務されることが多く、現実的に経営陣にそのセクションに強い人を設置することは難しいことがうかがえますが、まずは経営者がITやセキュリティ部門の活動内容や業務量の把握に努める必要があると言えるでしょう。
参考:NRIセキュア、「企業における情報セキュリティ実態調査2021」を実施
もし情シスが無くなったらどうなるのか?
もし情シスが無くなった場合、障害時のトラブルシュートやDX化に対応できず事業継続に大きな支障をきたすでしょう。つまり「コスト」と捉えられがちな部門が無くなると、「プロフィット」の部分に対し大きく直接的な影響をもたらすという事です。
業務システムが利用できなくなることで社内の業務効率が悪化し生産性が低下します。テレワークもできません。昨今の社会情勢に置いてきぼりになり若手の採用が滞ります。万が一セキュリティ事故が起きた時には企業の信頼を失うでしょう。この点から見ても情シスはもはや「コスト」ではありません。事業活動において重要な部門です。
ましてや、従業員や経営者から業務を丸投げされているのであれば、業務内容は属人化することは避けられません。情シス部門に全てを預けてしまうのは経営者としては無責任だと言えるでしょう。属人化してしまうと常に大きな退職リスクにさらされることになります。
私たちはこれまでのIT化を捨て去りアナログ時代に戻ることはできません。情シスなしには、急激に変化する社会に柔軟に対応していくのは非常に難しいと言えるでしょう。ですから情シスは無能ではなく企業運営にかかせない存在なのです。
情シスのアウトソーシングも1つの解決方法
情シスの重要性をお分かりいただけたかと思います。
情シスを無能と呼ばせないために、そして機能不全に陥らせないために、新しいシステムやIT技術者を採用することも選択肢の一つです。
しかし情シスの業務の一部をアウトソーシングすることも有効な手段です。外部の事業者と連携し情シスの中でも業務量が多い業務の一部をアウトソーシングすることは業務負荷軽減への即効性があります。
外部の事業者が提供するマネジメントサービスは自組織でIT技術者を雇用するよりも退職リクスが無く、サービスとして専門家によるコンサルタントを受ける事が出来ます。また情シス業務の属人化も防ぐことができます。外部事業者の支援内容にもよりますが多くの場合、自社で運用するよりもコストが圧倒的に抑えられるでしょう。
情シスの業務で負荷が高いタスクは通年ではなく、一時的に負荷が急上昇することが多いのです。たとえば、新入社員や異動のタイミングでPCの入れ替えなどが発生します。
また、新入社員による問い合わせがヘルプデスクに集中する時期でもあります。このように特定の期間に負荷がかかる業務については、人材を採用することも難しく情シスが残業をすることでしのいでたりします。
こうした負荷が急上昇する時期は業務をアウトソースすることで、一時的な負荷がかからないようにコントロールすることができるのです。
まとめ
これまでの記事で、情シスが企業にとって必要だということは理解いただけたかと思います。
「情シスは無能だ」という意見の方も、情シスの業務を理解してみることで、情シスの負荷を下げることが可能なのです。
帝国データバンクの全国「社長年齢」分析調査によると、2021年の社長の平均年齢は60.3歳です。どうしても世代的に経営者はITリテラシーが低い傾向にあります。情シスが提案してもその価値が判断できずに承認されないという状況に陥ってしまっているケースをよく目にします。
もし、経営者の方が自社の情シスの健全性を疑うのであれば、本来の業務すら円滑に進むことを阻害してしまっているのではないでしょうか。
経営者が理解を深めるためにも、情シス業務を外注(アウトソース)して、客観的な意見を取り入れてみてはいかがでしょうか。
作業と業務を分断し、作業をアウトソースするだけでも情シスの負荷は経験できます。その時間を活用し、経営戦略やDX化に向けて戦略を練ることに注力してはいかがでしょうか。
健全な情報システム部門は健全な企業の運営にも繋がります。苦手意識をもたずに、フラットな目線で情シス部門と向き合ってみてはいかがでしょうか。