現在社内で管理しているデバイスを考えた時に、パソコンはもちろんのこと、スマートフォンやタブレットなど様々なツールがある中で、そのすべての機器にソフトウェアがインストールされており、そこにはライセンスが存在します。
ただでさえデバイスの種類が増える一方なのに、リモートワークの普及によりPCやサーバの数が増え、使用するソフトウェアの種類も増えているでしょう。
また、一昔前であればインターネットに接続しなくても使用できるオンプレミス版がほとんどでしたが、現在はクラウド版が増え、買い切りだったソフトウェアもサブスクリプションの契約もメジャーとなりました。
このようにソフトウェアライセンスが複雑化している中で、もし誤ってライセンス違反が発覚した場合は違約金の発生や企業の信用を失いかねないという危機的状況にあるのです。
この記事では、ライセンスの重要性、リスクなどをご紹介していきますので、ライセンス管理のきっかけとなることを願っております。
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Contents
ライセンス管理とは
ライセンスとは、企業内においてパソコンでアプリケーションを操作したりクラウドにアクセスして業務を行う際、その使用するソフトウェアを使用したりする権利のことです。
このソフトウェアには「このサービスを使う許可を出しますよ」や、「この日まではライセンスが有効ですよ」という情報が明記されており、その決まりに違反しないように管理するのがライセンス管理です。
私たちが普段生活している中でもライセンスはたくさんあり、その管理を行っています。
例えば動画サービスであれば、月々に決められた額のお金を支払い、そのライセンスに応じた動画を見ることができますが支払わなければ途端に動画を見ることができなくなってしまいます。
プライベートにおけるライセンス管理は自分が使用しているもののみであり、さらには数もそこまで多くはありません。
しかし、企業内においてのライセンス管理およびIT資産管理は、自分が使用していないソフトウェアのライセンス管理も行わなければならいことがほとんどです。
うっかりしてしまったということが許されない業務なだけに、重要な業務の一つであると言えます。
ライセンス管理の重要性
小規模の企業でそこまでソフトウェアを使用しない場合は総務や経理の方が兼任してライセンス管理を行なっていることもありますが、中規模の企業となると情報システム部門の方が業務の一環として行なっていることがほとんどです。
ほとんどの企業では総務や経理の方にITの知識は求められませんが、ITの知識を持っている情報システム部門が管理することには意味があります。
現在ソフトウェアの契約はいくつもの種類に分かれており、その中には専門用語もたくさん出てきます。
企業向けのソフトウェアは契約も細分化されており、例えばウイルスソフト一つ取ってもクラウド版とオンプレミス版があるなど、知識がなければどちらが良いのかわかりません。
ついついオンプレミス版を契約したものの、サーバ構築などを考えておらずに使わなくなってしまうケースもあるのです。
今のネットワーク状況を踏まえて契約を精査する必要があり、最適な環境にするためにはネットワーク技術者が不可欠となります。
普段プライベートで使用しているソフトウェアを考えるとライセンス管理に深い知識が必要であるとは考えにくいですが、企業向けのライセンス管理にはしっかりとした知識が必要なのです。
資産管理の重要性についての詳細は「企業における「資産」とは?資産管理の重要性や方法を解説」の記事で紹介しています。
ライセンス管理しないことのリスク
これほどライセンス管理を重要としている理由は、それほど大きなリスクを抱えているからです。
簡単な例でいくと、クラウド版に関してはライセンスが切れると使用できなくなるため、業務やシステムに多大な影響が出てしまいます。
さらに、企業向けのライセンスは契約してからすぐに使用できるようになるものは少ないため、業務が数日ストップしてしまうというリスクがあります。
しかし、これはまだリスクとしては軽いほうです。
10年ほど前からライセンスを使い回している企業に対して厳しく取り締まる方針が固まったため、もし不正にライセンスを使用していることが疑われた場合、企業には大きなダメージが降りかかります。
疑いがかかった時点で調査が入り、そこで少しでもライセンス違反が発覚した場合はそのソフトウェアの使用禁止、さらには罰則金を支払わなければならなくなります。
また、企業名も公表されるためイメージダウンにつながることは間違いありません。
故意にライセンス違反を犯していない場合であっても、結果は同じです。
ついうっかりで企業に大ダメージを与えるような事象を避けるためにも、ライセンス管理は必須事項と言えます。
ライセンスの主要な形態
ライセンス管理を学んでいく際に、まずはライセンスの形態をしっかり理解しておく必要があります。
これはライセンス契約を行う際の最も基本的な事項であるため、ライセンス管理を行う第一歩だと言えます。
自家用車を買う際に一括なのかローンなのかリースなのかという契約の違いのように、ライセンス契約にも様々な形態があることを理解しましょう。
サブスク型
クラウド型で最も多い形態がサブスク型です。
月額で定められた料金や、都度課金型で料金が加算されていきます。
現在サブスクで最も勢いがあるのがAmazonが展開するクラウドサービスのAWSと言えるでしょうが、他にもPhotoshopをはじめとするAdobe製品やMicrosoft365など、かつて買い切りだったソフトウェアもクラウドの普及によりサブスク型へシフトしています。
買い切りではないため常に料金が発生して使いにくい気もするかもしれませんが、社員の増減により使われていないソフトウェアが発生することもないことが利点と言えます。
参考:マイクロソフト「Microsoft 365」
参考:アマゾン ウェブ サービス (AWS)
参考:Adobe「Adobe Creative Cloud」
デジタル型
デジタルライセンスと呼ばれる形態で、現在最も使用されているデジタルライセンスはWindows 10のライセンス認証でしょう。
以前は新規インストールやPCの初期化後には必ずインターネット経由か電話でプロダクトキーの確認が必要でしたが、今は必要ありません。
ライセンスがBIOSに紐づいているのでメモリなどのハードウェアを交換しない限りはプロダクトキーの入力が必要なくなりました。
プライベートで使用しているPCであればプロダクトキーをどこか忘れないところに保管していれば良いですが、社内で数百台以上のPCを管理している場合は、すべてのプロダクトキーの中から該当の番号を探すのも大きな手間でした。
PCの数が増えれば増えるほど初期化する機会も増えるため、デジタルライセンスの登場はとても効果的だと言えます。
フローティング型
フローティング型は購入したライセンス数が同時に使用できるライセンス数という意味で捉えると良いでしょう。
通常のライセンスはインストールしているPCと同数となりますが、フローティング型の場合はインストールするだけではライセンス消費のカウントにはなりません。
リモートワークでよく使用されているCitrix Workspaceにもフローティング型のライセンス契約があります。
週に2度ほどのリモートワークを行う方々が集まるオフィスでは、人数分のリモートワークソフトは必要ありません。
この場合フローティング型であれば、同時に全員がリモートワークすることはまずないため従業員の人数よりも少ないライセンス数で運用することが可能です。
会議などで使用が多くなるコアタイムにライセンス数が超えないか見張る必要はありますが、費用面で抑えることができる可能性の高い形態です。
CPU型
ソフトウェアと聞くと普段操作するPCで使用するイメージが強いですが、データベースなどを使用している場合はサーバにもライセンスを割り当てる必要があります。
データベースだけではなく、Linux系を操作するRed Hotや複数サーバを仮想的に構築するハイパーバイサソフトなどはサーバに割り当てるライセンスです。
これらのライセンスはサーバごとではなくCPUごとに割り当てる必要があります。
複数サーバを一つの仮想マシンとして使用している場合はライセンスがいくつも必要となり損をしている気分になるかもしれませんが、逆に一つのサーバで複数の仮想マシンを構築している場合はライセンス数も少なく済みます。
どのような環境で使用しているのかをしっかり把握した上で契約しなければいけませんね。
オープンソース型
オープンソースとはそのままの意味で、ソースが公開されているソフトウェアです。
基本的に使用することに費用はかかりませんが、その点保証もありません。
二つのファイルの差異を見つけるWinMergeや、Linux系サーバと接続してコマンドを撃てるTera Termなど、技術者の中では定番となっているものも多くあり、現在も現場で大活躍しているソフトです。
しかし、脆弱性が見つかっても対応されることもなく、さらにはヘルプデスクもないため使用するのは自己責任となります。
これらを踏まえた上で、しっかりとした管理で使用することが望まれます。
ライセンス管理をする課題とは
ライセンスを管理していくにあたり、どのような点に注意していくことが必要であるかをご紹介していきます。
ライセンス管理を行う際に必要な注意点は押さえたものの、実際にやってみると様々な課題が見えてくると思います。
そこで、ほとんどの企業でライセンス管理を行なった際に感じる課題についてまとめてみましたので参考にしてください。
膨大なソフトウェア数
企業で使用しているソフトウェアを確認すると、その膨大な量に圧倒されると思います。
同じ企業内であっても部署によって異なるソフトウェアを使用していたり、サーバ用とクライアント用に分かれていたりと、その数の多さに驚くでしょう。
さらにその一つ一つにライセンス契約が結ばれており、有効期限やライセンス数、禁止事項などがあるのです。
そのため、まずは今結んでいる契約の現状を把握することが課題となります。
ライセンス形態が複雑すぎる
近年クラウドの普及は目を見張るものがありますが、それと同時にオンプレ版などの契約形態も普及しています。
それ以外にも、新たな技術が出てくるたびに新しいライセンス形態が誕生していますので、一つのソフトウェアを見てもどの契約形態なのかを把握するのに一苦労するでしょう。
そして、それが自社に最も合っているものかという検討も必要となります。
これらは当然、会社の決定権を持っている人、さらには現場との協議の上で決定することになりますが、一筋縄ではいかずにまずはライセンス形態の説明からしていかなくてはならない課題があります。
従業員のライセンスに関する意識の低さ
実際にライセンス管理をしてみると、従業員のライセンスに関する知識や意識の低さに驚くでしょう。
セキュアなものかを確認せずにインストールされていることも多々あり、管理者の悩みどころです。
こちらがライセンス管理を適正に行なっていても、プロジェクト内で不正利用をおこなってしまうと違反にあたります。
規範意識の低さをあらためていく必要があることは忘れてはいけません。
従業員の常識として身につけていてほしいITリテラシーではありますが、驚くほど意識が低いのが事実です。根気よく講習会やセミナーを準備するなどして、リテラシーを向上するような環境を作ることが大切です。
ライセンス管理することのメリット
ライセンス管理を適正に行うことにより、リスクマネジメントができるということに直結していきます。
ライセンスの違反、不正利用は思った以上に重大であり、それを未然に防げるのは大きなメリットと言えます。また、ライセンス管理に付随してバージョン管理も行うことができるので、セキュリティの向上にもつながります。
ライセンスを正しく管理することによって、従業員が勝手にソフトウェアをインストールするようなことも避けられるでしょう。危険なソフトウェアだった場合はマルウェアなどが仕組まれていたり、ウィルスが混入しているケースも考えられますので、安易に個人の判断でソフトウェアをインストールできてしまう環境は避けた方がいいでしょう。
ライセンス管理やIT資産管理を正確に行おうとした場合、情報システム管理を行う方々の仕事量は膨大になりますが、企業にとってのメリットも多いため人員を増やしてでも行うべき業務です。
また、IT資産管理などの業務についてはアウトソーシングすることも有効な手段です。全て内製で対応しようとすると担当者の負荷は急増してしまいますが、アウトソースすることで、社内の負荷は一定に保つことが可能です。
ITアウトソーシングについての詳細は「注目のITアウトソーシングとは?メリットや活用時のポイントなど解説」の記事で紹介しています。
ライセンス管理のポイント
業務としてはボリュームの多いライセンス管理ですが、そのポイントをご紹介します。
重要なポイントさえわかれば、そこに力を注いで最大限の効果を発揮してください。
ライセンス形態の多様化に対応する
ご紹介した通り、ライセンス形態は現在でも多様化しており、今後さらにあらゆる形態が出現しかねません。
その中で、まずは現在契約しているライセンス形態を確認し、どのような形態があるのかを知ることが大切です。
また、現場からはどんどん新しいソフトウェアを使用したいという声が出てくるので、どのライセンス形態が適当なのかを検討していきましょう。
余剰ライセンスを削減してコスト管理
派遣社員が多くいる職場では、人の出入りも激しくなりライセンスを余分に用意しておく必要があります。
しかし、その予備のライセンスも過剰になりすぎると余分なコストをかけてしまいます。
また、事業縮小により人員が少なくなっているにも関わらずライセンス数はそのままにしていて、現在使用されていないライセンスが膨大にあるケースもあります。
そのため、定期的に余剰ライセンスがないかを確認することは大きなポイントとなります。
ライセンス数の管理手法の確立またはツールの導入
ライセンスを管理するために、手法の確立が最優先事項です。
更新が終わった段階で、納品書の管理や必要事項を表にまとめるなどを行う手順を決めておけば、更新のたびに苦労することもありません。
また、従業員数などは日々変化していくため、一括で管理できるIT資産管理ツールなどを導入するということも検討してみてはいかがでしょうか。
簡単にできそうでなかなか難しいのがライセンス管理です。ここにはコストをかけるべき価値があることを認識しましょう。
IT資産管理ツールの中には、クライアントPCのログ収集機能や、接続するWi-Fiスポットの制御、ソフトウェアインストール制御などの機能を持ったものも多くありますので、IT資産管理(ライセンス管理)だけだはなく多くのメリットがありますのでご検討してはいかがでしょうか。
IT資産管理の重要性やしないことのリスクについての詳細は「IT資産管理の必要性とは?運用が煩雑になりがちだが管理ツールは必須なのか?」の記事で紹介しています。
まとめ
ライセンス形態の多様化、新しいソフトウェア、さらにはリモートワークの普及などにより、ライセンス管理という業務に関しても作業ボリュームは増す一方です。
しかし、ライセンス管理に失敗すると企業に大ダメージを被ってしまうことも事実です。
そのため、必要な知識を持った人が先頭となり、適正にライセンス管理を行なっていく必要があります。
ライセンス管理およびIT資産管理をシステム化し、安全にソフトウェアを使用できる環境を構築しましょう。