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システム障害で企業が対応すべきこと 主な原因と対策事例を紹介

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現代の企業活動において、Webアプリケーションや会計システムなどのITシステムは欠かせない存在です。しかし、これらのシステムが常に正常に稼働するとは限りません。突発的なシステム障害が発生すれば、業務の停止や顧客満足度の低下といった深刻な影響をもたらします。

本記事では、システム障害とは何かを解説し、主な原因や損失額、実際の事例、発生時の対応、そして予防策について詳しく紹介します。

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システム障害とは?

システム障害とは、提供側のITシステムに何らかの不具合が発生し、サービスの一部または全体が利用できなくなる状態を指します。
たとえば、サーバーが落ちてECサイトが表示されない、決済処理ができないなどの事象が該当します。

なお、利用者個々の通信環境や端末の問題でサービスが使えない場合は、システム障害には含まれません。
システムの安定稼働を保つには、監視体制の整備と迅速な障害対応フローの構築が欠かせません。

システム障害を起こす主な原因

システム障害の原因は、大きく分けて「ハードウェア障害」「ソフトウェア障害」「人的ミス(ヒューマンエラー)」の3つに分類できます。それぞれの内容と代表的な事例を以下で詳しく見ていきましょう。

ハードウェア障害

ハードウェア障害は、物理的な機器の故障によって発生します。企業のITインフラを支えるサーバー、ストレージ、ネットワーク機器などは、長時間稼働による部品の劣化や外部環境の変化によって障害が発生するリスクがあります。

主な原因例:

  • サーバーのHDDやSSDの故障
  • 冷却ファンの停止によるCPUの過熱
  • 停電や電源装置(UPS)のトラブル
  • ネットワークルーターやスイッチの故障

実際のトラブル例:

  • データセンターでエアコンの不具合が発生し、サーバーが熱暴走して一斉停止
  • RAID構成のストレージ装置で複数のディスクが同時に故障し、データが復旧不能に

ソフトウェア障害

ソフトウェア障害は、システム内部のプログラムや設定に問題がある場合に起こります。OSやアプリケーションソフトのバグ(不具合)、バージョンアップによる互換性の問題、ミドルウェアやライブラリの誤設定などが主な原因です。

主な原因例:

  • リリース後に発覚する未検出のバグ
  • アップデート時のパッチ適用ミス
  • 異なるバージョン間での仕様の不整合
  • 外部APIの仕様変更への未対応

実際のトラブル例:

  • 会計ソフトのバージョンアップ後、データベースの構造が合わずエラーが多発
  • クラウドアプリケーションで新機能のリリース直後に動作不能に

人的ミス(ヒューマンエラー)

意外に多いのが、人間による操作ミスや判断ミスによる障害です。特に、運用・保守の現場では、コマンド入力や設定変更、メンテナンス作業の手順ミスが大きなトラブルにつながることがあります。

主な原因例:

  • 本番環境での誤操作(例:誤ってデータを削除)
  • 設定ファイルの編集ミスや未保存
  • 本来必要なテストの省略や誤認
  • 開発・運用間の連携不足による認識違い

実際のトラブル例:

  • オンラインショップの管理画面でメンテナンス実行対象を間違えて全商品を非表示に
  • 手順書の見落としにより、本番サーバーのネットワーク設定を誤って遮断

上記3つの原因は単独で発生することもあれば、複合的に絡み合ってシステム障害に発展するケースもあります。特に近年では、クラウド移行やシステムの複雑化により、障害原因の特定も難しくなってきています。だからこそ、監視体制や原因分析のプロセスの高度化が企業に求められています。

システム障害による損失額

システム障害がもたらす損失は、金銭的なものにとどまりません。
障害による企業イメージの悪化は長期的な損害に発展する可能性もあり、無視できないリスクです。
以下はその一例です。

障害の種類想定される損失額間接的な影響
ECサイトの停止数百万円〜億単位売上損失、信頼低下、SNS炎上など
金融機関の障害数億円規模顧客離脱、法的責任
通信インフラの停止数十億円規模社会的影響、行政指導

大規模システム障害の事例

みずほ銀行の事例

度重なるシステム障害により、ATMの利用停止や振込不能といった金融機関として致命的なトラブルが発生しました。単一の要因ではなく、ハードウェア障害、ソフトウェアのバグ、開発体制の問題、組織の意思決定の遅さなど、複合的な要因が重なったものとされます。
金融庁から業務改善命令が出され、ITガバナンスの見直しや外部有識者を含む改善委員会の設置が実施されました。この事例は、レガシーシステムの複雑性と組織体制の硬直化がリスクを高めることを示しています。

Amazon(AWS)の事例

クラウドサービスの代表格であるAmazon Web Services(AWS)でも、複数回にわたる障害が発生しており、2021年の大規模障害では、Netflix・Slack・Twitch・スマート家電などが一時利用不能になる影響があったほかに、多くの企業がAWS上でサービスを展開しているため、間接的に数百万ユーザーに影響。特にSaaSやIoTなど、クラウド依存度の高い分野で業務停止が起こりました。
過負荷とネットワーク構成の複雑さが原因とされましたが、復旧自体は数時間で完了し、対応の速さが注目されました。

KDDIの事例

2022年7月には、通信大手のKDDIで全国規模の通信障害が発生し、音声通話・SMS・インターネット通信が長時間利用できない状況となりました。
音声通話用の設備におけるメンテナンス作業中の設定ミスと、それに伴うトラフィック制御の不具合が重なり、障害が広範囲に拡大。
復旧までに3日以上を要し、KDDIは料金の一部返金や総務省への報告を行いました。障害情報の発信が遅れた点についても批判が集まり、危機管理広報とユーザー対応の重要性が再認識される事例となりました。

システム障害発生時に企業がすべき対応

システム障害が発生した際には、被害の拡大を防ぎ、早期復旧を図るために迅速かつ正確な対応フローが求められます。対応の質が企業の信頼性にも直結するため、以下のプロセスを適切に実行することが重要です。

障害の状態を把握する

まずは、どこで何が起きているかを正確に把握することが第一です。ログファイルやモニタリングツールを活用し、以下の情報を収集します。

  • 障害が発生しているシステムや機能の特定
  • 影響を受けているユーザー数や時間帯
  • エラーメッセージや異常値の有無
  • ネットワーク遅延やCPU過負荷などの兆候

また、ユーザーからの問い合わせや社内からの報告も情報源として重要です。障害発生時に情報が錯綜しやすいため、インシデント対応の責任者を決めて指揮を一元化することが望まれます。

障害の原因を特定する

次に、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、ヒューマンエラーなど、障害の原因を分類・切り分けながら調査を進めます。重要なのは、「応急処置」にとどまらず、再発防止につながる根本原因(Root Cause)を突き止めることです。

主な調査の切り口:

  • 最近のシステム変更履歴(リリース・設定変更・更新など)
  • アクセス集中や外部攻撃(DDoS等)の有無
  • ネットワーク機器の状態ログ
  • エラーコードやスタックトレースの分析

原因が複数ある場合もあるため、関連性を洗い出しておくと、再発防止に役立ちます。

担当者に修理や修正を依頼する

障害の原因に応じて、関係部門や外部パートナーに迅速かつ正確に修復作業を依頼します。特に外部のベンダーやクラウドサービス提供会社(例:AWS、Microsoft Azure)と連携が必要な場合は、以下の点に注意します。

  • エスカレーションルートや緊急連絡先の事前把握
  • 契約内容に基づくSLA(サービスレベル合意)の確認
  • トラブル内容を正確に共有するための技術資料の整備

社内外の担当者同士で責任の押し付け合いが起きないように、あらかじめ対応フローや体制を整えておくことが大切です。

障害の復旧を確認する

原因が判明し、復旧作業が完了したら、システムが本当に正常に戻っているかどうかを慎重に確認します。

  • すべての主要機能が想定通りに動作しているか
  • パフォーマンス(速度・安定性)に問題がないか
  • 同様のエラーが再発していないか
  • モニタリング値が平常時に戻っているか

一時的な復旧(ワークアラウンド)だけでは不十分です。業務の再開可否も含めて、復旧の完了判断を下す必要があります。また、復旧直後はトラブルが再発しやすいため、一定期間の強化監視を行うと安心です。

問題点の振り返りと再発防止策の策定

復旧後は、「なぜ起こったのか」「どうすれば防げたのか」を明らかにし、再発防止に向けたアクションプランを策定します。これは「障害報告書」としてまとめるのが一般的です。

振り返りで行うこと:

  • 発生原因と対応プロセスのタイムライン整理
  • 対応の良かった点・悪かった点の洗い出し
  • 再発防止策(体制強化・仕組み改善・教育など)の明文化
  • 経営層・関係部門への報告と共有

また、必要に応じて以下のような改善施策を検討します:

  • 自動化による人為的ミスの削減
  • アラート・監視設定の最適化
  • 障害時の連絡体制や情報共有ルールの再確認
  • 障害対応訓練(インシデント対応演習)の実施

システム障害を防ぐためにできる予防策をとろう

システム障害は、どの企業にも起こり得るリスクです。しかし、原因を理解し、適切な対応策や予防策を講じることで、損失を最小限に抑えることが可能です。
特にIT依存度が高まる中で、リスク管理の一環としての障害対応力の強化は、企業の信頼を守る重要なポイントとなるでしょう。

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