『Windows365』というワードを耳にして、一体それが何を意味するのか、Windowsと何が違うのかなどわからない方も少なくないでしょう。
Windows365は2021年7月に突然発表されたサービスで、知らない方が多いのも無理はありません。
近年、働き方改革の推進や新型コロナウィルス感染症拡大の影響でリモートワークが急速に導入されました。大企業だけでなく、中小企業においても積極的に導入しています。しかし、リモートワークの推進によってパソコンの持ち運びに不便を感じる方や自宅からリモートデスクトップで会社のパソコンに接続することに手間とストレスを感じる方も少なくないでしょう。
このような負担から開放してくれるのがWindows365なのです。
今回は、Windows365のサービス概要やメリット・デメリット、向いている中小企業などについて詳しく解説します。導入検討段階に至っていない経営者もぜひ最後まで読んでみてください。
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Windows365はどんなサービスなのか?
『Windows365』とは、仮想デスクトップに構築されたWindowsをさまざまな端末からネットワークを通じて利用できる仕組みのことです。仮想デスクトップはクラウド上に構築されているため、インターネット環境があればどこからでも接続することができます。ブラウザからも動作確認できるため、その利便性は一目瞭然です。
『Windows365』とは、Windowsの機能をクラウド環境上で提供する仮想デスクトップ基盤のサービスです。利用者はインターネット経由でWindows 365にアクセスすることで、「Cloud PC(クラウドPC)」というWindowsリモートデスクトップ環境を使うことができるようになります。ブラウザ経由で「Cloud PC(クラウドPC)」に接続するため、利用者のデバイスはWindowsPCのほか、MacやiPad、LinuxPC、Androidデバイスなどから利用することができます。
どこにいてもインターネットに接続することさえ出来れば、デバイスやOSによらず、同じデスクトップ環境を利用できるということが最大のメリットです。
Windows365とMicrosoft365を混同してしまう人もいます。しかし、両者は大きく異なるので注意しましょう。
ちなみにこれまではOffice365と呼ばれていたOfficeのサブスクリプション型サービスは無くなり、Microsoft365という名称に変わっていますのでご注意ください。
Microsoft365は、常に最新のWordやExcelなどのアプリケーションをPCにインストールして使用できるサブスクリプションサービスです。もちろん、Office製品以外を使うことはできません。しかし、常に最新のバージョンを利用できること、月額課金のサブスクリプション型であることから初期費用がかからない、デバイスやOSを問わず利用できる、パッケージ版のOffice製品よりメリットも多いことからMicrosoft365に切り替える企業が急増しています。一方、Windows365はOffice製品に限らず、業務上必要なさまざまなアプリケーションを動作させることができます。アプリケーションがOffice製品に限定されておらず、両者は使用目的や内容が大きく異なるため、まったく違うものと考えて差し支えありません。
リモートデスクトップや仮想環境と何が違うのか?
「リモートデスクトップや仮想環境と同じなのでは?」という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。結論から言えば、Windows365とは異なります。
リモートデスクトップは、あくまでも端末と端末をつなぐものです。例えば、自宅のPCから会社のパソコンに接続するというようなイメージになります。接続先の端末はクラウド上にはなく、遠隔操作が主な目的です。
また、仮想環境はマシンの中に仮想環境を作り出すことを意味します。わかりやすく言えば、WindowsPCの中にLinux環境を構築して違うOSを並行させるというイメージです。
Windows365のメリット
Windows365のメリットは下記の3点です。メリットを知ることで、リモートワークに最適なことがわかるので、ぜひチェックしてください。
同じWindows環境をあっという間に構築
1つ目のメリットは、社内のWindows環境を高速に構築できることです。契約をした後、すぐに使えるだけという魅力にとどまりません。例えば、端末ごとにOSをインストールする必要がなく、時間を大幅に短縮することが可能。また、セットアップも1度で済ませられます。
社員ごとでOSのバージョンが異なったり、搭載されているハードウェアによってパフォーマンスが変わったりすることもありません。同じ環境を全社員へ提供できるので、平等な点もメリットです。
もちろん、マルチデバイスに対応しています。例えば、MacOSでも接続できますし、iPadなどのタブレットからでもアクセスすることが可能です。Webブラウザで動作させることができるため、幅広い端末で気軽に使用することができます。
セキュアなリモート環境を整備できる
中小企業がリモートワークを推進する上で大きな課題となるのがセキュリティです。十分にリモート環境が整備されていない場合、会社からパソコンやデータを持ち出し、自宅で作業するケースもあります。情報が漏洩してしまう危険性がたくさんあるので、躊躇する経営陣も少なくありません。
このようなセキュリティに関する問題も一掃できる点がメリットです。導入後はデータを持ち運ぶ必要がありません。なぜなら、データはクラウド上に保存されているため、USBにデータを移行させたり、パソコンを自宅に持ち込んだりする必要がないからです。
また、Windows365はAzure ADでユーザー管理をしています。これにより、ゼロトラストセキュリティや多要素認証が採用されるため、万全なセキュリティ対策が可能です。月額料金を支払えば、企業が独自でセキュリティについて考える必要がなく、その負担をWindows365が肩代わりしてくれるので魅力を感じる方も多いのではないでしょうか。
初期コストを抑えることができる
3つ目のメリットは、初期コストを抑えられる点です。サブスクリプションモデルなので、月額費用で料金をお支払いしていくことになります。そのため、導入時に大きなコストがかからず、初期費用の負担が少ないです。
Windows365のデメリット
Windows365のデメリットは下記の2点です。良い面と悪い面、両方をチェックしておくことで自社に導入メリットがあるかより深く知ることができるので、ぜひ参考にしてください。
ユーザー数が300まで
1つ目のデメリットは、ユーザー数に限りがあることです。ユーザー数の上限は300までとなっており、社員数が多い企業にとっては使いづらいかもしれません。また、使用できるのは法人のみとなっているため注意しましょう。
パフォーマンスが重視される現場には不向き
2つ目のデメリットは、パフォーマンスが求められる中小企業の中には使いづらさを感じるところもあるという点です。ブラウザもしくは専用アプリから接続しますが、通常の環境よりも動作が重たくなっています。ゲーミングPCのようなパフォーマンスを期待することはできないため、テストで使用したあとに本格的な導入を検討するのもひとつの方法です。
どれくらいの費用がかかるのか?
Windows365の費用はプロセッサ、RAM、ストレージの3点で大きく異なります。また、サブスクリプションモデルになるため月額費用の請求です。具体的な料金はわかりやすいように、下記の表にまとめました。ぜひ参考にしてください。
プロセッサ | RAM | ストレージ | 月額料金(税抜) |
---|---|---|---|
1vCPU | 2GB | 64GB | 3,260円 |
2vCPU | 4GB | 64GB | 4,350円 |
2vCPU | 4GB | 128GB | 4,760円 |
2vCPU | 4GB | 256GB | 5,980円 |
2vCPU | 8GB | 128GB | 6,120円 |
2vCPU | 8GB | 256GB | 7,340円 |
4vCPU | 16GB | 128GB | 9,510円 |
4vCPU | 16GB | 256GB | 10,740円 |
4vCPU | 16GB | 512GB | 14,270円 |
8vCPU | 32GB | 128GB | 17,260円 |
8vCPU | 32GB | 256GB | 18,480円 |
8vCPU | 32GB | 512GB | 22,010円 |
Azure Virtual Desktopとの違いは?
似たようなサービスのひとつとしてMicrosoft社が提供している『Azure Virtual Desktop』があります。AVDも同様にWindows10を仮想デスクトップに構築できるサービスです。Windows365と同じサービスに見えますが、いくつかの違いがあります。
1つ目はユーザー数です。AVDで可能なユーザー数は無制限ですが、Windows365は300ユーザーまでとなります。
そのほかの違いとしては、稼働時間です。AVDは稼働時間を自由に決めることができます。一方、Windows365は常時起動している状態です。そのため、ユーザーがシャットダウンすることができません。
また料金も違いのひとつに挙げることができます。AVDを利用するためには、Azure料金に加えてデータ転送量、ストレージ費用、Microsoftのライセンス費用が必要です。利用料金が高額になりやすく、AVDに関する知識がある方の中には、大企業のためのサービスという印象を持っていた方もいるでしょう。一方、Windows365にかかる費用はライセンス料金などです。AVDに比べて費用が少なく中小企業も導入しやすくなったのです。
リモートワークに適しているのか?
Windows365はリモートワークに最適です。その理由として下記の3点を挙げることができます。
・接続端末を選ばず、タブレットや自宅のPCなどから容易にアクセス可能
・データや社内PCの持ち出しが必要なく、セキュリティ面で優れている
・自宅でWi-Fi環境が構築されているケースが多く、リモートワーク構築の際のコストが抑えられる
このように、圧倒的に中小企業のリモートワーク推進をサポートするものであり、セキュリティ面においても不安が少ないです。そのため、リモートワークに最適と言えるのではないでしょうか。
働き方は会社か自宅の2択ではなくなる
また、働き方の変革も期待できます。仕事をする場所は職場もしくは自宅の2択という企業が多いですが、それ以外の選択肢もWindows356なら増やすことが可能です。
例えば、PCやタブレットを所有しており、インターネット環境を使える場所ならそこが仕事場になります。例えば、カフェやコワーキングスペースなどです。カフェで仕事をする場合、直接データを持ち込むことはなく、クラウド上にアクセスして操作するため、セキュリティについて考える必要がありません。カフェなどでも仕事ができれば、従業員が楽しく働ける環境を提供することができ、同時に離職率の低下や優秀な人材の確保などにつながります。
まだ導入は早い?しかしPC環境は見直すべき
PC環境の見直しは早い段階で行うのがおすすめです。現代社会においては、働き方改革は必須であり、企業においては働きやすい環境を従業員に提供することが求められています。また、企業は感染症リスクに晒されているため、BPC(事業継続計画)を考える上でも必須といえるでしょう。
まとめ
新型コロナウィルスが猛威をふるっていることもありなかなか導入が進まなかったリモートワークの導入が急加速し、IT企業を中心に多くの企業がリモートワーク中心の働き方へシフトしてきました。
非常事態宣言の解除後も新規感染者数が落ち着いてきていることもあり多くの企業は事務所で勤務する従来型に戻してきている流れが強くなっていますが、大手企業などはリモートワークを継続していたり、働き方の選択肢の1つとしてリモートワークを定常化する動きがでています。
リモートワークを導入することで企業としても、オフィスのワークスペースを縮小することができたり、各経費が軽減できたりと、経営上のメリットも大きいためリモートワークの定常化は今後も進むものと思われます。
中小企業の多くは、状況を見ながら事務所勤務とリモートワークを切り替えてたり、週の半分をリモートワークにしたりと、事務所内を密にしないように取り組んでいます。しかし、そうすると従業員は働く場所が安定しなくPCの環境を常に移動しなくてはなりません。そういった非効率な運営を改善し、セキュリティも考慮されていて、デバイスやOSは問わず使えるという環境は非常に魅力を感じることだと思います。
しかし、前述のようにサブスクリプションでPC1台づつに毎月の安くない費用が発生します。中小企業の多くはランニングコストを軽減しキャッシュフローを明確化したいと考えるケースが多いでしょうから、いますぐ新しいものであるWindows365の導入には躊躇されることだと思います。
また、日本のビジネスシーンではまだまだセキュリティに対する対策にコストをかけることに前向きではないように感じます。
いかにセキュリティ面でも考慮されているとはいえ、Windows365の早期な導入は飛びつかないほうがいいでしょう。
Windows365を導入をすることで最大の恩恵を受けるのは誰なのでしょうか?
セキュリティ面についても配慮されていたり、デバイスの管理が単純化したり、PCにインストールされているアプリのライセンス管理が自動化できたりと、いくつものシーンで管理負担を軽減してくれます。
もっとも恩恵を受けるのは日々業務に追われているひとりで実務を担っていたり、兼任で担当されている中小企業のIT管理者なのです。
IT業務を軽減できるということは、属人化を防ぐことにもつながりますので、特定のIT担当者に負担をかけず、兼任でもいいのでチームでIT管理業務を振り分けたりして負担をへらすことが貴社のIT環境を守るための手段とも言えます。
Windows365の導入には一定のコストがかかるので、簡単に決められるものではありません。しかし、感染症リスクに晒されたり、働き方の変革を求められたりする現代社会だからこそセキュリティやIT機器の見直しは必須なのではないでしょうか。
この機会に経営陣はIT担当者と話し合い、リモートワークに対する課題を洗い出してみてはいかがでしょうか。
もし、貴社に専任のIT担当者が不在だったり、兼任で片手間で担当しているような場合は、最善のIT環境が実現できていない可能性が高いです。
この数年、どんどん新しいIT技術が出てきて、急激に導入されたりと環境の変化は目まぐるしいものがあります。
そのスピード感にプロフェッショナルなIT担当でもない限り、ついていくことは至難の技です。
そういう場合は、自社のIT担当者は情報の把握、判断することに集中していただき、IT管理や保守、新製品・サービスの検討などについての実務は外部のIT保守サービスベンダーに任せてみてはいかがでしょうか。
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