
リモートワークの普及やクラウドサービスの活用が進むなか、「固定IPアドレス」の導入を検討する企業が増えています。
しかし、そもそもIPアドレスの違いや、固定IPアドレスの仕組み・導入方法について正確に理解できていない…という担当者の方も多いのではないでしょうか。
固定IPアドレスを導入することで、セキュリティの強化や社外からの安定したアクセス環境の構築など、ビジネスにおいて多くのメリットがあります。
一方で、費用や運用リスクなどの注意点もあるため、導入前の正しい理解が欠かせません。
この記事では、IPアドレスの基本から、固定IPアドレスのメリット・デメリット、企業での活用例、取得方法や費用感まで、わかりやすく解説します。
「自社に本当に必要なのか?」「どうやって取得すればいいのか?」といった疑問に答える内容となっているので、ぜひ参考にしてください。
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Contents
IPアドレスの種類
IPアドレスにはいくつかの種類があり、利用シーンや役割に応じて使い分けられます。ここでは、代表的な4種類を紹介します。
グローバルIPアドレス
グローバルIPアドレスとは、インターネットに直接接続される機器に対して割り振られる一意のIPアドレスです。
世界中で重複しないよう管理されており、例えばWebサーバーやメールサーバーなど、外部からアクセスされることを前提とした機器に使われます。
このグローバルIPは、通常インターネットサービスプロバイダー(ISP)によって自動的に割り当てられます。企業がWebサイトやクラウドサービスを公開する際には、このアドレスが必要です。
ローカルIPアドレス(プライベートIPアドレス)
ローカルIPアドレスは、会社や家庭内などのローカルネットワーク(LAN)内で機器を識別するためのアドレスです。プライベートIPアドレスとも呼ばれ、ルーターやスイッチなどのネットワーク機器が内部で自動的に割り当てます。
このアドレスは外部のインターネットからは直接アクセスできないため、セキュリティ上のメリットがあります。PCやスマートフォン、プリンターなど複数の端末を同じネットワークに接続する際に利用されます。
固定IPアドレス(スタティックIPアドレス)
固定IPアドレスとは、常に同じ番号が割り当てられるIPアドレスです。インターネットに再接続してもアドレスが変わらないため、「静的IPアドレス」とも呼ばれます。
このタイプのIPアドレスは、VPN接続・リモートアクセス・自社サーバー構築・アクセス制限の設定など、ビジネスシーンで多く活用されています。
企業が外部から社内ネットワークにアクセスする際や、セキュリティを高めたいときには、この固定IPが大きな役割を果たします。
動的IPアドレス(ダイナミックIPアドレス)
動的IPアドレスは、インターネット接続のたびに自動的に割り振られるIPアドレスです。多くの一般家庭や個人ユーザーが利用しており、接続のたびにアドレスが変更される可能性があります。
この方式はIPアドレスを効率的に使えるというメリットがありますが、外部から安定してアクセスされる用途には不向きです。そのため、サーバーの運用やVPN接続などには固定IPアドレスが好まれます。
企業に固定IPアドレスが必要な理由
企業が固定IPアドレスを導入する理由は、主にセキュリティ対策と安定したネットワーク環境の構築にあります。動的IPアドレスでは実現が難しい機能や管理性を確保できる点が大きなメリットです。
外部からアクセスできる
固定IPアドレスを設定することで、社外から社内のサーバーやネットワークに安全にアクセスできる環境を整えられます。
たとえば、社員が外出先や自宅から会社のファイルサーバーにアクセスしたり、遠隔地から社内のWebカメラやIoT機器を管理したりするケースでは、一定のIPアドレスでアクセス先を特定できることが非常に重要です。
VPNやリモートアクセスツールとの組み合わせにより、セキュリティを保ちながら利便性の高い業務環境を実現できます。
セキュリティが向上する
固定IPアドレスを利用することで、アクセス元を特定して制限することが可能になります。
たとえば、クラウドサービスや自社システムの管理画面に対し、「このIPアドレスからのみアクセスを許可」という設定を行うことで、第三者からの不正アクセスを未然に防ぐことができます。
このように、アクセス制御の導入が容易になる点は、セキュリティ強化を図りたい企業にとって大きなメリットです。
企業における固定IPアドレスの活用例
固定IPアドレスは、企業のさまざまなIT活用シーンで導入されています。以下に代表的な活用例をご紹介します。
自社サーバーの構築
固定IPアドレスがあれば、自社でWebサーバーやファイルサーバーを構築・運用できます。
- 自社サーバーを使ってWebサイトを公開
- 社内専用のファイルサーバーを設置
- メールサーバーを構築して独自のメールアドレスを運用
これらのサービスは、安定したIPアドレスがなければアクセスできなくなるリスクがあるため、固定IPの導入が前提となります。
アクセス制限をかけられる
固定IPアドレスを利用することで、クラウドサービスや社内システムへのアクセス制限を設定できます。
たとえば、Google Workspace や Microsoft 365、各種SaaSなどに「この固定IPアドレス以外はアクセス不可」という設定を加えることで、情報漏えいや不正利用を防止するセキュリティ対策となります。
特に、情報資産を多く扱う企業や、リモートワークの従業員が増えている企業では、アクセス元の制御がセキュリティの鍵を握ります。
リモートデスクトップで自宅からリモートワーク
固定IPアドレスとVPNを組み合わせることで、自宅から社内のパソコンにリモートデスクトップ接続が可能になります。
- リモートワーク中でもオフィスと同様の作業環境を実現
- 安全な通信経路を確保し、情報漏洩リスクを軽減
- IT資産の一元管理にも有効
柔軟な働き方を支援するだけでなく、業務の継続性やBCP(事業継続計画)対策としても効果的です。
複数拠点をつなぎネットワークを形成
固定IPアドレスは、VPNを利用して本社と支社・営業所など複数拠点を安全に接続する際にも活用されます。
- 離れた拠点間でセキュアにファイルやシステムを共有
- 各拠点のネットワークを一体化し、業務効率化
- データセンターとの連携もスムーズ
こうしたネットワークインフラの整備には、IPアドレスが安定していることが重要条件となります。
固定IPアドレスの取得方法
固定IPアドレスを使いたい場合は、以下のいずれかの方法で取得できます。用途や環境に応じて選びましょう。
プロバイダーのオプションを契約
一番スタンダードなのが、インターネットサービスプロバイダー(ISP)でオプション契約する方法です。たとえば「GMOとくとくBB」や「OCN」など、多くのプロバイダーが固定IPのプランを提供しています。
特に法人向けのインターネット回線では、あらかじめ固定IPが付属しているプランもあるため、法人契約の際には要チェックです。
申し込みから設定まではプロバイダー側で案内してくれることが多く、初めてでも比較的スムーズに導入できます。
固定IPアドレスに対応しているSIMを契約
外出先やモバイル環境で使いたい場合は、固定IP付きのSIMカードを契約する方法もあります。
この方法なら、スマートフォンやタブレット、IoTデバイスなどでも固定IPを活用可能です。
特に、監視カメラや遠隔操作が必要な端末の運用に向いています。
ただし、対応している通信会社は限られているため、契約前に「固定IP付きかどうか」をよく確認しましょう。
セキュリティ強化や多様化する働き方には固定IPアドレスの活用が有効
リモートワークやクラウド利用が当たり前となった今、「どこから」「誰が」アクセスするかをしっかり管理することが、企業のIT環境にとってますます重要になっています。
固定IPアドレスを導入すれば、外部からのアクセス管理やセキュリティ対策がしやすくなり、働く場所に縛られない柔軟な働き方のサポートにもつながります。
もちろん、費用や運用リスクといった注意点もありますが、用途に応じて適切に活用すれば、企業のITインフラをより安全かつ効率的に整える強力なツールになるはずです。
まずは小規模な用途から導入を試してみて、自社にとっての最適な使い方を見つけてみてはいかがでしょうか。