クラウド技術が仕事や日常生活でも活用され始めてしばらく経ったこともあり、最近SaaSという言葉も定着してきました。
しかし、クラウドに関する話題の中で必ずと言って出てくるSaaSですが、正しく理解できている人はあまりいないかもしれません。例えば、SaaSとPaaS、IaaSの違いを理解できている人の方が少ないと思います。
簡単に言えば、SaaSは「サービスとしてのソフトウェア(Software as a Service)」ですが、SaaSに該当するサービスを意図せず使っていることも多いほど浸透しているのではないでしょうか。
そこで今回は、SaaSとは一体どのようなものなのかをご紹介していきます。
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SaaSってなにもの?
SaaSは「サース」と読みます。たまに「サーズ」と読む場合もありますが、「サース」と読んでいれば間違いはありません。
冒頭で「サービスとしてのソフトウェア(Software as a Service)」とお伝えしましたが、SaaSを知らない方が聞いても何のことだかさっぱり分からないはずです。
まず初めに知っておいてほしいことは、SaaSとはどのようなものなのか、具体的にどのような機能があるのかということです。
気づかないうちにSaaSを使用していることもあるため、仕事で使用しているソフトウェアを思い浮かべるとイメージがつきやすいと思います。
「サービスとしてのソフトウェア」とは
この言葉を聞くと、「サービス」という言葉をしっかりと知っている方ほど混乱してしまうと思います。
それは「ソフトウェアとは様々なサービスを提供してくれるものではないのか?」という疑問が生まれてしまうからです。
SaaSが示すサービスとは、媒体が存在しないサービスとなります。
一昔前のソフトウェアは、ディスクを購入してパソコンにインストールするものがほとんどでした。
このように、何か媒体を購入した場合はサービスを購入したのではなく媒体を購入したと考えるのです。
つまり、媒体を持たないサービスがSaaSに含まれるのだということです。
現場にはインターネット経由でサービスが提供され、現在SaaSと意識せず使用しているサービスも含まれることが多いです。
例えば、多くの人が利用しているMicrosoftのMicrosoft 365(Office365)やリモート会議の普及に一役買ったZoomやSlackなどもSaaSに含まれます。
オンプレミスはSaaSに含まれる?
オンライン上でソフトウェアをダウンロード後、パソコンやサーバにインストールして使用するオンプレミス版はSaaSに含まれるのかという疑問が生まれると思います。
買い切りのソフトウェアや、インストール後にライセンス更新を行って使い続けるタイプのソフトウェアです。
結論から言うと、オンプレミスはSaaSには含まれません。
これは、これも先ほどのサービスとしてのソフトウェアという言葉で考えると、購入したものがサービスではなくダウンロードファイルであるという考え方なのです。
最近ソフトウェアを利用しようとした際に、クラウド版とオンプレミス版が用意されていることがほとんどですが、クラウド版であればSaaS、オンプレミス版はSaaSではないということになるのです。
ASPとの違い
近年よく耳にするようになったASPですが、クラウドと聞くとASPを連想する方もいらっしゃるでしょう。
これは誤って使用されることが多いのですが、ASPは事業者を指します。
つまり、サービス自体を示すときにはSaaSであり、その事業者を示すときはASPということです。
事業部内でもたまに間違って使用されている方もいらっしゃいますので混乱してしまうかもしれませんが、それぞれの言葉の意味を見ると「Software as a Service」と「Aplication Serivice Provider」です。
そのため、「SaaSを提供しているASP」ということになります。
そのほかの「◯aaS」との違い
SaaSの他に、PaaSやIaaSなど似たような言葉が複数存在します。
これらは「as a Service」という点は共通しておりますが、提供しているサービスがソフトウェア以外ということです。
これらの用語も併せて覚えておきましょう。
PaaSとは?
PaaSは「Platform as a Service」の略で、特定のソフトウェアを起動させるためのプラットフォームをインターネット経由で提供するサービスです。
言葉にするとわかりにくいですが、クラウド上に開発環境が用意されていてすぐに利用できるという画期的なシステムです。
開発のプロジェクトに携わったことのある方ならお分かりかと思いますが、環境を整えるだけでそれなりに時間がかかります。
展開している企業によって使用できるソフトウェアが異なるため、ある程度の制約がかかりますが時間コストを大幅に減らすことのできるのがPaaSです。
AWSもPaaSを提供しており、開発の現場で飛躍的にAWSが普及していったのはPaaSのおかげといっても過言ではありません。
IaaSとは?
IaaSは「Interface as a Service」の略であり、サーバやネットワークなどのインフラと呼ばれる機能がインターネット上で利用できます。
使用例として最も多いのは、今までは社内ネットワーク内でしか参照できなかった共有フォルダを、IaaSで作成したサーバに置き、社外からもファイルの参照や編集を可能にしたことです。
在宅ワークが増えたこと以外にも、客先に常駐しているメンバーなどともファイルの共有ができるようになったため、作業効率が飛躍的に向上しました。
SaaSを使用するメリット
クラウド上で様々なことができると聞くと効率が上がりそうな気がしますが、具体的にメリットを提示できなければ仕事で採用とはなりません。
そこで、SaaSのメリットをご紹介しつつ、SaaSを使用するとどのような部分が楽になり、実際にコストをカットできるのかに触れてまいります。
システムの構築や運用が不要になる
SaaSを利用すると驚くのが、アクセスするとシステム構築がすでに完了している状態なので作業がすぐに開始できるという点です。
システム構築の段階で多くの時間を要していたプロジェクトも、時間短縮が行えるため時間コスト、人員コストが大幅に削減できるのです。
また、システムの運用に関しても提供元が運用してくれるため、面倒なアップデートやライセンス更新などを行う必要もなく、さらにコストが削減できるというメリットがあります。
テレワークで大活躍
テレワークを行うにあたり、ZoomやSlack、Teamsを活用して会議やコミュニケーションを取っている企業がほとんどです。
これらのSaaSがなければ、今やテレワークは不可能とも言えるでしょう。
また、月額使用料を払えばすぐに使用できるというメリットもあります。
すでに環境は構築されているため、ユーザーは必要な登録を行うだけですぐにリモート会議が可能です。
テレワークに欠かすことのできないコミュにケーションツールとしてチャットやWeb会議ツールは欠かせません。また、ファイルのやり取りをするためのクラウドストレージなど、業務を遂行する上で、多くのSaaSを活用していることに気がつくでしょう。
アカウント運用を行う必要はありますが、基本的なシステム運用は全て提供元が行ってくれるため、コスト削減に一役買ってくれています。
SaaSによるデメリット
メリットがたくさんあるSaaSですが、逆にデメリットも存在します。
基本的に新たなサービスを利用するにあたっては、メリットを最大限に活かしデメリットを最低限に抑えるという対策が必要となります。
そこで、SaaSのデメリットについてご紹介しますので、しっかりと対策を行いましょう。
セキュリティ対策
SaaSに限らず、クラウドを活用するにあたってはセキュリティ対策は必須事項です。
CMなどを見ていると、クラウドのセキュリティ対策は万全という謳い文句が出てきます。
しかしそれはクラウド上のセキュリティであり、クラウド上に置かれているシステムへのアクセス、または社内ネットワークなどのセキュリティは保証されておりません。
最近はAWSでもファイアウォールのサービスを開始しておりますが、セキュリティの専門家を社員に置かないということは基本的にあってはならないことです。
また、社外でSaaSを使用していた社員がそのままパソコンを紛失してしまうという事例もあります。
この場合、パソコン自体が暗号化やロックがかかっていれば情報流出のリスクは下げられますが、何も対策していなければ会社の信用問題に関わります。
デバイス自体をBIOS単位でロックをかけたり、アカウントの2段階認証など社内規定で定め、セキュリティ対策を万全にする必要があることは忘れてはいけません。
中小企業に必要なセキュリティ対策についての詳細は「中小企業のセキュリティ対策は何から始めるべき?ビジネスを守るために行うべきこととは」の記事で紹介しています。
使い勝手は提供元次第
自社でシステムを構築した場合、その仕様は要望次第でカスタムが可能です。
しかし、SaaSでは提供されたサービスの仕様のカスタムは限られています。
そのため、どうしても痒いところに手が届かないサービスであることも多く見受けられます。
さらに、障害やサービス終了に関しても提供元次第ということも考えなければいけません。
通信障害が起こるとそのサービスが一切使用できなくなってしまうことから、会議のキャンセルやテレワークから急遽出社という慌ただしい対応が必要になる可能性があります。
また、提供元がサービス終了を決断した場合には、問答無用で期日が来るとサービスが使用できなくなるため、システム移行など不意な対応が必要になる可能性もあることは覚えておく必要があります。
SaaSの具体的な導入例
SaaSを導入するメリットをご紹介してきましたが、具体的にどのような部署でどんな効果が期待できるのかをご紹介していきます。
様々なSaaSが存在しますが、一部の関係部署だけではなく会社全体にSaaSが導入可能であり、それが大きな成果をもたらすことは知っておいて損はありません。
人事
人事が最も恩恵を受けるサービスが勤怠システムです。
一昔前であればタイムカードが当たり前に使用されていましたが、現在は客先の常駐やリモートワークの普及により、タイムカードでは管理しきれなくなっています。
そこで活躍するのがインターネット経由での勤怠システムです。
サイトにログインし打刻することで業務開始の痕跡が残せるとともに、残業時間や稼働状況などの確認も簡単に行えるようになったのです。
他にも人事の通達などもオンライン上で公表することで特定のIDを持った人にのみ閲覧できるようにできるなど、利便性は格段に上がるのです。
経理・財務
パソコンの普及によりアナログベースの帳票管理などは格段に効率が良くなりました。
しかし、SaaSを使用することでさらに効率が上がるのです。
例えば、経理上押印が必要な場合、在宅者や遠隔地に勤務している場合は数日間のタイムラグがありました。
しかし、現在はオンラインで押印することも可能です。
また、様々な資料を一括検索することで目当てのデータを直感的に呼び出したり編集できることもSaaSの強みだと言えます。
営業
営業における今までの問題点は、情報の共有ができていないことではないでしょうか。
情報の共有を行う際には営業が集まって会議を行うのですが、どうしても長時間になってしまったり客先の都合で全員が揃わなかっりすることも多々あるでしょう。
しかし、SaaSを使用することで部署内全員のスケジュールを一元管理したり、情報の共有を行うことが可能となるのです。
一見SaaSと営業は関係ないかと思われがちですが、実は営業こそが効率をアップさせるためにSaaSを使用することが必要であると言えるのです。
データ管理
データベースの普及により、従来よりも格段に膨大なデータを簡単に取り扱うことができるようになりました。
しかし、それは出社が当たり前の時代では有効であり、現在のリモートワークには適しません。
SaaSはリモート環境下でも効果的に作用するので、その効果は絶大です。
また、以前からデータのバックアップにはオンプレミスのバックアップソフトを導入することがメジャーでしたが、SaaSを使用するとオンライン上でも可能となります。
オンプレミス版では複雑だったバックアップの設定も、日々更新されるクラウド版であれば直感的に操作できるのです。
コミュニケーション
どの部署でも活躍しているSaaSはコミュニケーションツールです。
オンラインの会議に始まり、離席中にチャットを飛ばすなどを行えば今までよりも意思疎通はスムーズに行えます。
コロナ禍によりリモート会議が普及しておりましたが、その結果として現場にいなくても会議が可能になったことは大きな躍進と言えるでしょう。
リモートが普及した現在になくてはならない存在が、SaaSのコミュニケーションツールと言えます。
SaaS導入の流れ
現在も一部SaaSを使用しているケースが多いかもしれませんが、さらにSaaSを活用するために新たなソフトウェアを導入するにはどのような流れが必要なのかをご紹介します。
もちろん、これ以外にも会社独自の規定などがあるかもしれませんが、導入時に最低限行うべき内容についてご紹介します。
対象業務の選定
各部署からの要望があった場合も、社内全体で動く場合も実際に使用する人たちの声は確認する必要があります。
導入するにあたってメリット・デメリットや、導入時の技術的な人員の確保や時期など、導入にするための目的を明確にして実現させるために必要なピースを集めます。
せっかく導入しても利用者が望まない仕様であれば使われずに経費だけ掛かってしまうので、この作業がその後の運命を左右すると言っても過言ではありません。
サービスの違いを比較し、検討する
現在使用しているコミュニケーションツールを見ても、TeamsやSlack、ChatworkやZoomなど様々なサービスが存在しています。
これらの使い勝手を精査するとともに、機能以外にも価格設定なども確認しながら提供しているベンダー・サービスの精査を行います。
ベンダーとの打ち合わせ
ベンダーを設定したら、実際にコミュニケーションを取ります。
しかし、現在多くのライセンスは代理店を設けているところが多く、正しいルートを辿る必要があります。
海外ベンダーが提供しているサービスも多いため、契約を行う際は代理店を経由することをお勧めします。
そこで、どのプランが良いのかを精査しながら、会社に合ったサービスを契約していきましょう。
トライアル
こちらが想定しているものとの差異はないかを確認する作業が必要となります。
そこで、実際にサービスを使用してみることで想定していた動作が行えるかを確認していきます。
ある程度の人数がいる場合は、部署を限定してトライアル版を使用してもらったり、検証環境が整備されている場合は実際に検証環境からアクセスして使用してみるのも良いでしょう。
最終決定の判断材料となるため、単に使ってみるというよりもは、導入後を想像しながら使用してくことが重要となります。
運用開始
契約を結んだ後は運用開始となります。
しかし、使用方法や社内規定などの確認を全社員に周知する必要があるので、説明会を開いたりマニュアルを作成して熟読したりしてもらう必要があります。
また、導入後にもうまく動作ができない場合もありますので社内のヘルプデスクを設けたり、ポータルサイトにてQ&Aを作成したりすることで滞りなくサービスが活用できます。
まとめ
SaaSは現在のビジネスシーンになくてはならない存在となりました。
とはいえ、選定せずに導入するのではなく、しっかりと既存知ステムと連携が取れるかなどの調査・確認を行った上での導入をお勧めします。
しかし、無数にあるSaaSを精査するのは大変な作業です。どれも必要な機能は満たしているように見えるが、どれを選んだらいいのかわからないという人も多いのではないでしょうか。
もしどんなサービスを選べば良いのか、どれくらい対応に工数がかかるかなどの不安をお持ちの方は、一度「ITボランチ」などの相談できるサービスを利用してみるのも良いでしょう。